解明進む男性型脱毛症 脱毛の機序に基づく薬剤が登場
 板見  智 大阪大学皮膚科学助教授

 男性型脱毛症は40歳代の男性の30%が罹患するポピュラーな疾患だ。毛周期を繰り返すうちに次第に成長期が短縮し、頭頂、前頭の硬毛が軟毛となるミニチュア化現象である。原因の一つである男性ホルモンの標的細胞が間葉系細胞の毛乳頭細胞であることが明らかになり、病態に基づく薬剤の開発が進んでいる。

 加齢に伴う老人性脱毛は大なり小なり誰でも経験することになるが、男性型脱毛症は遺伝的素因を有する人において、ある決まったパターンをとって思春期以後に発症する。

 脱毛と呼ばれているが、毛髪の成長に関与している毛包が消失するのではなく、頭頂、前頭といった部位の硬毛が毛周期を繰り返すうちに次第に成長期が短縮し、軟毛となるミニチュア化現象である。具体的には一つの毛穴から2~3本の剛毛がみられるが、徐々に剛毛が軟毛へと変化していき、最後には目に見えないほどの軟毛しかなくなってしまう。

 この男性型脱毛の発症の要因には遺伝的要因と男性ホルモン(テストステロン)が関与しており、このことは既に50年前に明らかにされていた。

 しかし一方で、男性ホルモンは思春期以降のひげや胸毛の発育を促す。なぜ男性ホルモンが部位によって毛の発育と退縮という全く逆の作用を示すのかというパラドックスは長い間未解決であった。

 近年、毛組織を構成する細胞を単離培養することが可能になり、in vitroでの解析から男性ホルモンの標的細胞が間葉細胞の毛乳頭細胞であることが明らかになった。男性型脱毛の発症メカニズムについても、分子レベルで解明されてきている。

■毛周期の調節メカニズム
男性ホルモンの作用は部位で異なる

 毛器官(毛包とも呼ばれる)は主に外胚葉由来の上皮系組織と中胚葉に由来する結合織性組織により構成されており、これらの組織間相互作用により毛器官の発生と再生がなされる。毛器官の最も特徴的な点は、生涯にわたり毛周期と呼ばれる組織再生と退縮のプロセスを繰り返すことである(127ページ図1)。成長期(anagen)と呼ばれる細胞増殖や分化の盛んな時期を経て退行期(catagen)へ移行する。そして毛母では細胞分裂が停止しアポトーシスを生じ急速に細胞数が減少して萎縮する。休止期(telogen)には毛根は棍棒状となり、毛器官の下端は立毛筋が付着する毛隆起と呼ばれる場所まで上昇してくる。休止期毛器官の下端から発生した新しい毛が発生し、次の成長期に入り古い毛髪は脱落する。

 頭髪では成長期が4~6年、休止期が約3カ月といわれている。毛乳頭も休止期には萎縮するが、消失することなく残存し、次の周期に再び増大する。

 胎生期の器官形成にかかわる因子群が毛周期にも必須であることが次々と明らかにされてきている。これは分子生物学者が、組織再生の最適なモデルとして毛周期のメカニズムに興味を持ったためである。これらいずれの異常によっても毛髪の発育、形態の異常が生じる。

(1)細胞増殖因子

 毛母細胞や毛乳頭を活性化させる因子で、胎生期の形態形成シグナルであるWnt、肝細胞増殖因子HGF(Hepatocycle Growth Factor)、インスリン様成長因子IGF--機JInsulin like Growth factor -機法"胎児の段階や成長期の初期に作用し毛包などの組織を発達させる蛋白質Shh(Sonic hedgehog)などがある。

(2)転写因子

 休止期から成長期への移行を促進させる転写因子にはβ-カテニン、Lef-1(lymphoid enhancer binding factor-1)、STAT3(Signal transduction and Activators of Transcription 3)などがある。

(3)細胞死関連物質、毛包誘導因子

 退行期を誘導する物質として、毛根の萎縮を促す蛋白質TGF-β(transforming growth factor-β)、線維芽細胞増殖因子FGF5(fibroblast growth factor 5)、ビタミンD受容体などが関与している1-4)。

毛包の男性ホルモン標的細胞

 興味のあることに、ステロイド受容体ファミリーの多くは毛周期に影響を及ぼす。例えば、-.哀襯灰灰襯船灰ぅ匹砲茲訛震哭"甲状腺ホルモンやレチノイド、ビタミンDの異常による脱毛-C棒-ホルモンによる多毛や男性型脱毛―などがある。- ↓△琉枉錣鰐售鏨韻両緘薹郎挧Δ紡个垢觝醉僂砲茲辰動zき起こされる。

 男性ホルモンのユニークな点は、標的細胞が間葉系細胞であることと、毛器官の種類によって成長期誘導と逆の退行期誘導という異なる作用点を有することである。

 男性ホルモンは思春期以後に毛周期を変化させる。その反応性は部位によって異なっており、ひげ、胸毛は通常思春期以後の男性においてのみ軟毛より終毛へ変化するが、腋毛、恥毛では性別に関係なく認められる。また、遺伝的要因を有する特定の男性においては男性型脱毛の発症にも関与する。一方、後頭部の毛髪、眉毛などでは男性ホルモンはその発育に関与していない。それぞれの部位による男性ホルモン感受性の違いが、毛乳頭細胞により決定されると考えられてきている。

 男性ホルモン感受性のあるひげ、腋毛、男性型脱毛の前頭部毛の毛乳頭細胞では男性ホルモン受容体の発現量が多く、さらにひげ、男性型脱毛の毛乳頭細胞は-況燭N5α-リダクタ-ゼのmRNAを発現している。5α-リダクターゼとは、男性ホルモンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素である。-況燭倭偉)腺や外陰部など特定の臓器にのみ発現している。

 一方、後頭部の毛乳頭細胞では、-儀燭N5α-リダクターゼの発現しか認めず、男性ホルモン受容体の発現もわずかである5,6)。毛器官の上皮系細胞には男性ホルモン受容体は認められないことから7)、男性ホルモン標的細胞は毛器官においては上皮系ではなく間葉系細胞であり、ひげ、男性型脱毛の発症などの強い男性化徴侯の発現には男性ホルモン受容体と-況燭N5α-リダクタ-ゼの両方が必要であると考えられる。

毛成長のin vitroモデル

 培養毛乳頭細胞に男性ホルモン受容体を強制発現させた後、角化細胞とトランスウェルを用いて共存培養し、男性ホルモンの細胞増殖に対する影響を調べてみると、ひげ毛乳頭細胞を用いた場合には、男性ホルモンの添加によって角化細胞の増殖が増強される。この増殖促進はIGF--気涼耋孫蛎里覗乏欧気譟△劼欧任OIGF--気,男性ホルモン依存性のパラクライン(paracrine)成長因子と考えられる8)。

 一方、男性型脱毛の毛乳頭細胞を用いた場合には、男性ホルモンによる角化細胞の増殖抑制が認められ、in vivoにおける毛の男性ホルモン感受性を良く再現したモデルが確立できた(図2)。このときの培養上清を分析したところ、角化細胞の強力な増殖抑制因子TGF-β1が男性ホルモンによって産生亢進し、さらに活性化も増強していた9)。

 TGF-β1のノックアウトマウスでは毛の成長期が延長しており、これにTGF-β1を投与することで退行期を誘導できる10)。このことからTGF-β1が毛包の退行期誘導因子として機能していると考えられ、男性型脱毛症の発症メカニズムにおいても、男性ホルモンによって毛乳頭細胞から分泌されるTGF-β1が重要なメディエーターとして働いていると推測される。

 以上のことから、同じ男性ホルモンがなぜ部位によって毛の発育と退縮という全く逆の作用を示すのかというパラドックスも一部は明らかにされた(129ページ図3)。今後はTGF-βをターゲットにした新しい治療薬が開発される可能性がある。

■治療
病態に基づく薬剤が登場

 男性型脱毛は目立つ症状であるため、古くから多くの治療法が考案されているが、薬物療法で美容的に満足できるものはなかった。最近になり、その病態に基づく薬剤が開発され、有効性が証明されてきている。40歳代の男性の30%が罹患するポピュラーな男性型脱毛の治療についてここ数年の話題を紹介する。

(1)ミノキシジル

 本邦では数年前に1%ミノキシジル溶液(リアップ)が市販され話題になった。本来カリウムチャンネルオープナーであり、降圧剤として開発されたが、副作用に多毛が認められることから、男性型脱毛治療で外用として用いられている。作用機序は不明な点が多いが、ミノキシジルにより毛乳頭細胞におけるプロスタグランジンE2の合成が高まることが何らかの育毛作用を示すと推測される11)。また毛乳頭細胞のアデノシン三リン酸(ATP)感受性カリウムチャンネルオープナーの受容体であるアデノシン・スルフォニルウレア受容体を介して血管の増殖因子であるVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)の産生を促すことが報告されている12)。

(2)フィナステライド

 現在欧米ではフィナステライド(プロペシア)が内服の「毛はえ薬」として処方されている。-況?5α-リダクターゼの特異的阻害剤で、テストステロンから5α-ジヒドロテストステロンへの活性化の阻害により男性ホルモンの作用を抑制している。元来、前立腺肥大症の治療薬として用いられていたものだが、使用中に男性型脱毛症の改善が見られたため、用量を少なくして男性型脱毛症の治療薬として使用されるようになった13)。副作用は、性欲の減退が数%にみられる。男児を妊娠中の女性では胎児の女性化が生じるため内服禁忌とされている。本邦でも臨床治験が終了したので、2004~2005年の間には使用可能になるものと思われる。60%に男性型脱毛の改善が認められた。

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