開発競争激化する「生活改善薬」
 薄毛、肥満、インポテンツ… 言えぬ悩み解決し大人気

薄毛(はげ)や肥満などに効く新しい薬が増えている。
欧米の製薬会社はこれらの薬剤の開発に本腰を入れた。
日本では承認が少なく個人輸入などで問題も。

 これまでの概念を超えた新しい分野の薬の開発が、欧米では盛んになっている。はげ、肥満、うつ病、性的不全(インポテンツ)など、患者は生活に不便を強いられていたが、これが直接の原因となって命を落とすような疾患とは言い難い症状を改善する薬だ。

 発熱や痛みなどの症状を抑えてきた従来の薬に対し、これらの新しい薬は患者の生活の質を向上させる「生活改善薬(ライフ・スタイル・ドラッグ)」と呼ばれている。

 欧米の巨大な製薬会社は、こぞってこの分野での新薬開発に力を入れ始めている。

 例えば、米国の大手製薬会社イーライ・リリーは、組織を大幅に組み替えた。内科や骨格系などという病気の分野ごとに開発から営業までを統括する本部制を敷いているが、1996年、そこに「女性の健康」本部を新設した。肥満や精神的な不安定さ、骨がもろくなる骨粗鬆症こつそしょうしょうなど女性特有の問題を解決する薬を開発・販売している。

副作用少なく安心して処方できる

 同社は、生活改善薬の分野では世界でも先進的な企業の1つである。86年12月にベルギーで初めて発売したうつ病の薬「プロザック」は、現在世界100カ国以上で発売され、97年末までに世界で2400万人、米国内では1800万人の患者に投与された。97年単年の売上高は25億ドルに上る超大型の薬だ。

 ここまで普及した理由は、従来のこの種の薬と比較すると副作用が少ないからだ。便秘、口の渇き、目のかすみ、排尿の障害といった副作用を引き起こす頻度が低くなった。また、従来の薬は心臓へ負担をかけることから投与量を制限する必要に迫られる患者もいたが、プロザックではこうした心配が少ない。

 このため精神科の専門医だけでなく、一般的な内科などの医師でも安心して処方できる。世界各国で幅広く使用されるようになり、「ハッピードラッグ」という別名で呼ばれる場合もある。強い不安感やストレスなど、今までなら薬をあまり使われなかった患者に処方されるようにもなっている。

 プロザックの副作用が少ないのは、選択的に特定の物質にだけ作用を及ぼすからだ。その作用の仕組みは完全には解明されていないものの、いまのところこう考えられている。

 脳の中で感情や思考などの情報を伝達する役目を担っている神経細胞は、それぞれ隣り合った神経細胞と直接結合しておらず、わずかな隙間を持っている。その間を、情報を伝達する物質(セロトニン)が移動して感情や思考が伝わっていく。うつ症状を持つ患者はこの物質の量が少ないか、もしくは働きが不十分と推測されている。

 いったん放出された伝達物質は、また元の神経細胞に回収されて再び利用される。プロザックはこの回収だけを抑制する。その結果、情報を伝達する物質の濃度が高まり、うつ症状が軽減される。

 この薬はまだ日本で発売されていない。日本イーライリリー社の政策企画部は「80年代の初めに日本での発売を検討したが、国内のうつ病の薬の市場が小さかったことなどで取りやめた。今後も発売の予定はない」と説明する。

 しかし、間もなく他の製薬会社が日本で同種の薬の発売を考えている。明治製菓の医薬品部門や英国の大手製薬会社、スミスクライン・ビーチャムなどだ。先行する明治製菓はすでに96年3月に厚生省に認可を申請した。

 不況の続く日本では自殺者の数が年々増加している。特にサラリーマンの管理職は、その数を伸ばしている。リストラによる配置転換や退職勧告、いじめなどにより精神的に追いつめられ、精神科医の門をたたく管理職はこのところ増えている。こうした薬が1日も早く承認されることが専門家の間では期待されている。

 このような生活改善薬が広がり始めたのは、欧米の大手製薬会社で薬の副作用の情報を幅広く集める手法が根付いているからだ。

 例えば米最大手の製薬会社メルクが米国で今年1月に発売した育毛薬「プロペシア」は、もともと前立腺肥大症の薬として92年に発売されたものだった。ところが、この薬を服用している患者の頭髪にも変化が起こり、育毛作用があることが見つかった。

 前立腺肥大症は男性の体内のある種の男性ホルモンが作用して発生する。このホルモンは同時に髪の毛のもとになる頭皮の細胞などにも影響を及ぼし、はげの原因にもなっていた。プロペシアを服用すれば、このホルモンが抑制されて再び育毛が始まる。

 メルクの日本法人である万有製薬の高橋希人・臨床医薬研究所副所長は「まだ発売したばかりだが、米国では爆発的に売り上げを伸ばしている。メルクグループでは、うつ病の薬、服用するタイプのニキビの薬など、いわゆる生活改善薬を幅広く開発し始めている」という。

生活改善薬使う方が結局は安い?

 製薬会社にとってみれば、欧米をはじめ、日本などの先進国が医療費と薬剤費の抑制策を進める中、既存の分野の薬剤だけで売り上げを伸ばすことが難しくなりつつある。現在注目されている生活改善薬は、製薬会社の研究者にとっては最先端の知識が必要なわけでもなく、興味の薄い分野だった。

 ところが、はげや性的不全など、患者は口にはできないが「治したい」と痛切に感じている障害を取り除くため、発売すればたちまち大ヒットに結びつくことが多い。これに味をしめた各社の経営陣が、生活改善薬に力を注ぎ始めたのだ。

 一方で、経済的な面から生活改善薬を重要視する動きも始まっている。この種の薬を使えば、一時的には薬剤費がかかっても、医療費の総額が抑えられるのではないかという考え方だ。

 例えば、肥満の薬。ドイツの大手化学会社BASFグループの医薬品会社クノール社が今年2月米国で発売した「シブトラミン」は、神経系で満腹感をつかさどる物質の濃度をコントロールして食欲を抑える働きを持つ。全米の肥満専門の医師を中心にこの薬を処方する医師が増えており、米国では35万人の患者が服用し、今年は1億6000万ドル以上の売り上げが見込まれている。

 この薬は事実上は誰にでも効果があるのだが、医師の処方を受けることができるかどうかは肥満の度合いを測る指数BMIを基準に判断している。体重を身長の2乗で割ったこの数値が30以上(米国での肥満の基準値)になると、内蔵や血管などに合併症を引き起こす危険が極めて高い。この指数が30以上の人がある種の糖尿病にかかる危険性は、健康な人の20倍以上になるという調査結果もある。

 例えば、身長170cm(1.7m)で体重90kgの人は、この数値が31.1となる。この人は現在は病気を持っていない場合でも、いつ病気を患うかわからない状態といえる。ところが、シブトラミンを服用すれば数カ月で5%以上は体重が減ることが多い。85kgまで体重を抑えられれば、BMIは29.4まで落ち、合併症を引き起こす危険性は大幅に減る。

 クノールジャパンの田中諭社長は「心臓疾患や糖尿病などの治療に必要な薬剤費や医療費を考えれば、こうした症状を未然に防ぐ肥満薬を使う方が総費用は安い」と主張する。

 これまで、日本では生活改善薬のような薬は医療機関で処方する薬としては、ほとんど認められていなかった。というのは、薬剤費の抑制を進める中で、この種の薬を認めれば薬剤費が膨れることなどがその理由だ。

 現在、日本で数社がこの分野の薬の開発を終え、厚生省に申請しているが、そうした会社のある開発担当者は「新しい分野であり、発売が認められるかどうか微妙だ。厚生省を刺激しないように、表向きの発言は極力避けている」と話している。

個人輸入を放置する方が危険

 ところが、ここにきて状況が変わりつつある。欧米でこうした薬が認めらているのに、国内でこのまま未承認薬として日陰の存在として放置しておくことが、逆に危険性が高いと指摘されるようになったからだ。

 今年7月、米大手製薬会社のファイザーが販売している性的不全治療薬のバイアグラを、日本の国内で使用した60代の男性が死亡する事故が発生した。この患者は、高血圧、糖尿病、不整脈の治療を受けていたが、友人から譲り受けたバイアグラを服用し性行為をした後、心肺の機能が停止した。

 米国でバイアグラは医師の診断の後、患者に十分説明が施された後に処方される。血管を広げる作用を持つこの薬は、糖尿病治療薬などの他の血管を広げるような薬と併用すると、血管が広がりすぎて血圧が下がり、心臓に負担がかかるという危険性が指摘されている。そのため、糖尿病治療薬などとの併用は禁止されている。

 ところが、日本ではバイアグラはまだ発売が認可されておらず、個人は自分で使用する分に限って輸入するか、知人やインターネット、代行業者などを通じて入手するしかない。こうした水面下の経路では患者にきちんとした情報が伝わらず、逆に事故が起こりやすくなる。

バイアグラの認可契機に門戸開放か

 現状ではこうした事故を防ぐ手だては皆無に近い。日本の法律では、医療機関で使う薬を製造元が消費者に直接広告することを禁じている。ましてや、厚生省の認可を受けていない薬について、広告することはできない。

 今回の事故で対応に苦慮しているのは、ファイザーの日本法人だ。同社の広報部は「企業の社会的責任を考えれば危険についての情報を発信すべきという意見もあるが、一方で広告が禁じられているのでその方法がない」というジレンマに悩んでいる。

 法律が施行された段階では、バイアグラのような患者の購買意欲を刺激する薬が出現し、それを手軽に輸入できるようになるということが想定されていなかった。しかし、現在では法律と現実に大きなギャップが開いてしまっている。

 結局、現段階では厚生省がインターネット上のホームページに米ファイザー本社の情報を添付している。消費者に危険を告知するために、異例の措置をとっている。

 情報や商品の動きに国境が消滅し、認可によって政府が市場を管理する医薬品市場も海外の動きにさらされ始めている。育毛剤や肥満の薬なども消費者には手軽に感じられるが、副作用や禁止事項があり医師の診断に基づいて処方しなければ、患者の健康を損なう結果になりかねない。

 これまで閉鎖的であった日本市場の新薬開発の門戸も開かれつつある。日米欧で新薬開発におけるデータを共通化する作業をすすめてきた厚生省は、今年8月、海外でまとめたデータを日本に持ち込んで申請する際のガイドラインを発表した。まだ試行錯誤の段階ではあるが、これにより人種間の投与量の違いなどの調査を済ませれば、従来よりも短い期間で海外で販売されていた薬を日本に持ち込むことができるようになった。

 医薬品の動向に詳しい医療経済研究機構の森口尚史調査部長は「来年にはバイアグラが認可され、これを契機に国内でも生活改善薬と呼ばれる薬が数多く認められるようになるのでは」と予想している。(伊藤  暢人)

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