適正使用を目指すガイドラインが登場

講師 新井佑朋


1994年に明治薬科大学薬学部を卒業後、国内大手のOTC薬メーカーに勤務し、OTC薬学術担当、医療用医薬品安全性情報担当などを務め る。2006年より薬局・薬店に勤務し、OTC薬の相談販売に取り組んでいる。現在、無料メールマガジン「おもいっきり具体的! 薬局の薬の豆知識」を好 評配信中。登録はhttp://yuho.main.jp/から。


テレビコマーシャルなどで男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia:AGA)の露出が増え、AGAの認知は広まってきて いる。また、2010年4月には日本皮膚科学会が医師向けに「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)」を発表。医療現場だけでなく、OTC医薬品 市場までも考慮した、わが国の現状に合わせたガイドラインとして、注目を集めている。今回は、OTC医薬品の発毛・育毛剤をラインアップする、リアップと カロヤンの2ブランドを取り上げて解説する。

Trend

 国民生活センターによると、近年、養毛剤への苦情が増えている。科学的根拠が乏しい治療法が横行しており、健康被害などが後を絶たない。 そこで日本皮膚科学会は、医学論文に示された効果を基に、薬剤や外科的治療などを評価。男性型脱毛症診療のガイドラインを策定した。ガイドラインでは、治 療法を「強く勧められる(A)」から「行わないよう推奨する(D)」の5段階で評価(図)。「A」に該当したのは、医療用医薬品のフィナステリド(商品 名:プロペシア)と、ダイレクトOTCのミノキシジルの二つだった。ミノキシジルはリアップシリーズ(大正製薬)の主成分であり、重症度を問わず、男性型 脱毛症治療の第一選択薬に位置付けられた。

 一方、カロヤンシリーズ(第一三共ヘルスケア)の主成分、カルプロニウム塩化物は「考慮してもよいが、十分な根拠がない(C1)」に分類 された。ガイドラインによると、カルプロニウム単独での有益性は、現段階では十分に実証されていない。しかし、生薬との配合剤を含むわが国での膨大な実績 も考慮し「外用療法の一つとして推奨する」と記載されている。

 このほか、医薬部外品や化粧品の育毛剤に多く配合されているt-フラバノンやアデノシン、サイトプリン・ペンタデカン、ケトコナゾールも 「C1」に分類された。C1の評価を受けた五つの成分は、軽症の男性型脱毛症の治療に向くとされる。その一方で、外用セファランチン製剤は「用いない方が よい(C2)」に分類されたが、メーカーは有効性を主張する。

 このほか、押さえておきたい育毛剤に、2種のテストステロン(男性ホルモン)を主成分とした外用剤ミクロゲン・パスタ(啓芳堂製薬)があ る。クリーム状の外用剤で第1類医薬品に分類される。まゆ毛やヒゲ、胸毛、脇毛などの硬毛の育成を促す。男女ともに使用できるが、頭髪では、男性ホルモン が毛髪サイクルを短くする方向に働くため、使用してはならない。

 発毛・育毛剤をブランド別に分類した筆者オリジナルの「ブランドパッと見表」を65ページに掲載した。店頭における相談販売時に活用してほしい。

Pick up
◯リアップ(大正製薬)

 リアップは、医療用医薬品として承認されたことのないミノキシジルを配合する「ダイレクトOTC」として1999年に発売された。

 リアップシリーズはいずれも第1類医薬品で、唯一、効能・効果で「発毛」をうたうことを認められている。主成分のミノキシジルは、壮年性 脱毛症で小さくなった毛包を深く、大きくすることで発毛を促す。ミノキシジルは、もともと米食品医薬品局(FDA)で経口の降圧剤として承認されていた。 ところがその副作用として多毛が見付かり、外用剤として製品化された経緯がある。このため、使用上の注意にも循環器系の副作用が多く挙がっており、使用者 で心筋梗塞を発症した例が報告されているが、因果関係は不明である。5%ミノキシジル製剤は2009年に承認され、同年リアップX5(エックスファイブ) が発売された。従来品の5倍濃度ミノキシジルを含有する。

 2008年に発売されたリアッププラスは、ミノキシジルに加えて毛母細胞に栄養を補給するパントテニールエチルエーテルと、皮脂の酸化を 防ぐ酢酸トコフェロール、清涼感を与えるl-メントールを配合した。また、基剤にはリアップやリアップレディに用いられているプロピレングリコールではな く、低刺激性のブチレングリコールを採用(リアップX5も同様)。臨床試験を男性で行ったため、男性限定の製品となった。筆者はリアップシリーズを初めて 使う顧客にはリアッププラスを勧めている。

 女性向けのリアップレディは2005年発売。リアップと同じミノキシジル1%製剤だが、パッケージやボトルが女性向けにデザインされている。添付文書もリアップとは異なる。キャッチコピーは「女性の頭髪密度を高める」。

 リアップシリーズ全体で最も多い副作用は、接触皮膚炎や湿疹などの過敏症状である。1%製剤より5%製剤の方で発現頻度がやや多い。

 また、リアップシリーズは共通して使用量1mLを正確に計量できる容器を採用している。リアップ、リアッププラス、リアップレディは、あ らかじめ1mLを量り出す作業が必要だが、リアップX5は容器の先端ノズルをまず頭皮に当て、しっかりと押し込むことで1mLが計量できる容器である。リ アップやリアッププラスなどからリアップX5に買い換える顧客には、使用法が異なることを申し添えるとよいだろう。

 なお、血行促進のための頭皮マッサージは塗布前に行う。整髪料は、塗布したリアップの薬液が乾いてから使用する。効果が実感できる目安は、ミノキシジル1%製剤で半年後、5%製剤で4カ月後である。

◯カロヤン(第一三共ヘルスケア)

 カロヤンシリーズは、旧第一製薬が手掛けた発毛促進剤。カルプロニウム塩化物が主成分で、効能・効果は脱毛症など。1973年の「カロヤ ン」「カロヤン-ハイ」発売以来、人気を博している。サリチル酸配合製品が第2類医薬品、その他が第3類医薬品である。カロヤンシリーズは販売実績があ り、リピーターが少なくない。

 カルプロニウムは、血管拡張作用と血流増加作用を有する発毛促進成分。毛根に十分な栄養と酸素を供給することで効果を発揮する。医療用医 薬品のカルプロニウムの濃度は5%だが、OTC薬のカロヤンシリーズでは、2%ないし1%である。いずれも、薬液塗布後に軽くマッサージすると効果的だと いわれている。2007年以降、第一三共ヘルスケアとして、カロヤンシリーズの刷新に着手。現在、広告活動には俳優の佐藤浩市を起用している。

 カロヤンSは、シリーズの基幹製品。濃度1%のカルプロニウムに加え、頭皮を殺菌するヒノキチオールや酸化防止の酢酸トコフェロール、  毛根に栄養を与えるパントテニールエチルエーテル、頭皮を軟らかくして有効成分の浸透性を高めるサリチル酸を配合。清涼感をもたらすl-メントール、かゆ みを抑えるジフェンヒドラミン塩酸塩を含有する。

 2004年に発売された無香料のNFカロヤンガッシュは、シリーズの最高峰に位置付けられた製品である。キャッチフレーズは「毛根覚醒」 「医薬品の力で『生える毛根』へ」である。かつて、微香タイプもあったが現行品は無香料のみ。従来品の「1回分の2mLを簡単に定量できるワンタッチ計量 ノズル容器」に加え、塗布部にシリコンゴムの「マッサージヘッド」を採用、使用感を向上させた。濃度2%のカルプロニウムのほか、毛根の脂質を除去するカ シュウチンキ、頭皮を殺菌するヒノキチオール、毛乳頭細胞を活性化するチクセツニンジンチンキを配合する。また、容量が見直され、140mL入りの1サイ ズ展開から、120mL入りと240mL入りの2サイズに変更された。トライアルから継続ユーザーまで幅広く対応できるようになった。

 2010年に発売されたカロヤンアポジカΣプラスは、サリチル酸を配合。スーッと浸透する使用感のトニックタイプ。カシュウ、チクセツニンジン、ヒノキチオールを配合している。

 カロヤンアポジカGは粘度が高い製剤で、液垂れしにくいのがウリ。髪の生え際に直塗りしやすく、有効成分がとどまりやすいジェルローショ ンタイプである。カルプロニウム濃度は1%。カロヤンジェルローション1から改称し、カロヤンアポジカΣプラスと統一感のあるパッケージにリニューアルさ れた。メーカーは二つの製品を「『浸透力のΣプラス』か『生え際にとどまるG』か」とアピールする。

 カロヤン21は、カルプロニウムが血行を促進し、パントテニールエチルエーテルが毛母細胞を活性化させる。湿潤効果のあるキトフィルマー が毛髪にうるおいを与える。カロヤンタイムの後継品で、枝毛が気になり始める青年層がターゲットである。キャッチコピーは「気にしているだけじゃダメだと 思う」。

Check point

 発毛・育毛剤の主な副作用は、湿疹やかゆみなどの過敏症状である。症状が悪化する兆候が見られたら、直ちに使用を中止し、医師または薬剤 師に相談するよう伝える。個人差はあるものの、65歳を過ぎると生理機能が衰え、著しい効果は期待しにくい。販売する際には注意が必要である。

 発毛・育毛剤は決められた用量を超えて使用しても効果は上がらず、副作用のリスクが高まるばかりである。いろいろな製品を渡り歩く顧客に対しては、効果が感じられる目安である約半年間は使用を継続することを勧める。

 頭髪の脱毛を悪化させる要因としては、紫外線や脂っこい食事、不規則な生活、精神的ストレスなどが挙げられる。発毛・育毛剤だけに頼ら ず、悪化要因を避け、生活習慣の改善を並行して行うようアドバイスする。また、円形脱毛症であっても、複数の脱毛巣があったり、体毛の脱毛にまで及ぶ場合 は医療機関の受診を勧奨する。

 脱毛や軟毛化は、加齢に伴う現象であるため、薬剤を使用したからといって全員が満足するような結果は得られない。「効果がない」と話す顧客には、髪にコシが出てきた、抜け毛が減ったというのも効果のうちであることを申し添える。

図 男性型脱毛症の治療アルゴリズム(日本皮膚科学会『男性型脱毛症診療ガイドライン』より改変引用)


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